光都はポケットに手を突っこんだまま、階段を登って行く紀子と優貴の後姿を見送った。
彼女らを守り抜く・・・それが、光都の個人的な信念であり、”お父様”から課せられた使命でもあった。

「・・・篠北・・・!てめぇ色ボケてんじゃねぇぞッ!カッコつけてる場合かオラアッ!!」


鬼気迫る声で、男が向かってくる気配を感じた。
拳が空を斬って振り上げられて、すぐにも折り返して光都の後頭部めがけて突き刺さる勢いで飛んできた。


ゲシッ!


光都は男が繰り出した拳を、回し蹴りでへし折った。


「ぐぉうっ!?」

痛みに思わず声をあげる不良男子。
額から流血している。


「・・・悪いが、ここは通せない。」


そのまま二段蹴りを決めた。

階段の踊り場が一気に将棋倒しになる。
逃げ場のなかった乱闘が、一斉に鎮まった。


「死にたい奴から前に出な・・・楽に殺してやる。」

守るために殺す。

それが自分なりの覚悟だった。

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