「よぉ!おねぇちゃん此処の学生?」
不意に、軽快な声が鼓膜を貫くように飛び込んできた。
紀子は思わず耳を抑えて、うっさいと言いそうになったが止めておいた。
こんな不良校の、しかも入学初日に目を付けられるなんて御免だ。
「・・・は・・・はい。」
「おぅ!いいね!不良校って聞いてちょっと不安だったんだよねぇ!君みたいな可愛い子がいて良かったよ!」
ニコニコとやってきたタイフーン率100%の男に、紀子は怒りを感じた。制服も鞄も名札の色も完璧に1年生の格好なので、同い年とは判別できる。
紀子はクレームを付けようかと口を開いたが、その前に男の方がまた大音量で喋り出した。
「俺は篠北 光都(しのきた こうと)!よろしくっ!」
「聞いてませんけど・・・。」
「そんなこと言わないでさぁほら!君も名前教えてよ!」
「・・・えと・・・井上 紀子(いのうえ きいこ)です・・・。」
「へぇ!紀子っていうのか!覚えとくよ!」
光都は、紀子の肩をバンバンと叩く。
痛い。
登校予備日の今日、現在紀子達は学校の扉が開くのを待っているところ。
昇降口の前で、生徒がそろいもそろってマヌケ面を晒している。
紀子もそれに準じている。
光都は相変わらず駄弁り続けていたが・・・。
次へ
s.1
やめる