「どれ、整備してやろう。」

先のロイヤリティ イタリア・バチカン戦にて、撃ち漏らした残党の追撃任務から戻ったランスロットを、レイズナーは微笑んで迎えた。

この男ほどのタヌキは居ないと思う。
大量の人間が殺されたというのに、この男はニコニコしている。
食えない奴だ、ランスロットはそう思う。


「ふむ・・・ヘヴンシステムは問題ないようじゃな。そして・・・おぉ、破損も無いようじゃな。」


レイズナーは、黒いカップに入った黒い液体を飲みほし、ランスロットの方に椅子を回した。
丸眼鏡が、怪しげに光る。


「・・・アーサーは・・・どんな奴でした?」

「どんな奴・・・とは?」

「いえ、あの・・・どんな性格にプログラミングしたんです?」


ふん、と強く鼻で息をして、レイズナーは引き出しの中を漁った。
ガサゴソ・・・ガサゴソ・・・ガサゴソ・・・なかなか探し物が見つからないようだ。


「そうじゃな・・・奴は・・・他のものには心を開かず、距離を取るような風に設定した。君は彼の”オッズ”だったか?」

「・・・はい。」

「・・・彼はわしが人生で生み出した2番目の失敗作じゃ・・・。」

「・・・失敗作・・・?」

「・・・化け物じゃ・・・奴を怒らせてはならない。直情型にプログラミングしたのが仇になった。」


ゴソ・・・と、引き出しを漁る手の動きが止まった。
一番下の引き出しの隅っこの方に、少し焦げて茶色くなった書類が挟まっている。

器用な手つきでその書類を引き出す。焦げた部分がボロッとはがれおちた。


「奴に載んだ物は”フォビドゥン”・・・そう、禁忌だ。絶対に・・・エリー・エルを殺すな。」

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