ゲントは、恐怖に震えていた。

目の前に鎮座しているのは、まともな思考を持っているとはいえ、あのレアギアだ。
そのうえ真紅の鉄ともなれば、一瞬でひき肉にされかねない。

「・・・あの・・・隊長?・・・どうか・・・?」

エリーは気まずそうな表情でゲントを見つめていた。

あの後、なんとかエリーは隊員の目をかいくぐって、ゲントと共にここに来た。
ここはアジトの物置。

人通りはほとんど無いと言っていいがらんとした空間に、3人と1機は座していた。


「・・・そのレアギアが・・・アーサーとやらが・・・俺達に友好的なのは解った。そいつが言っていることもおそらく真実だろう・・・だがな・・・。」


ゲントは、深く、深く深呼吸して、言葉を反芻した。
ゆっくり、ゆっくり流れる時間の中で、ゲントは重い口を開いた。


「そいつが裏切らないっていう保証は・・・そいつの言っている事が本心だという保証は無いんだろう?」


エリーは、ゲントの言葉を否定したかった。

アーサーはここ2日の間、パトロールのレアギアもすべて退け、エリーとシュトツァーを護ってくれた。
だが、絶対に破壊はしなかった。武器をそぎ、相手の活動時間の限界まで足止めして撤退させる。

その『破壊しない』という行為が、エリー達を半信半疑にさせていた。


「・・・隊長・・・俺は、信じます・・・ずっとメカニックやってきてんだ、こいつが載んでるモノの凄さと、同時に背負ってるモノの大きさも理解できる・・・だから、隊長にも信じてほしいんです。」

シュトツァーが、矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。


アーサーは、ずっと黙りこくっていた。
開いた脚部ユニットに、腕を乗せて、肩をすくめている。

まるで、何かに謝っているように。


「・・・悪い・・・これから・・・会議があるんだ・・・席外してもいいか・・・。」


ゲントはゆるやかに席を立ち、鍵を閉めて物置を出て行った。

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