「今助けるぞ。」

俺は瓦礫の山に手をかけた。

どけられそうな岩から手当たり次第にどかしていく。

周りには、時間が止まる前に潰されてしまった家族の遺体が散乱している。
あぁ、グロテスクだ。
眠れなくなりそう。


「助けて・・・助けて・・・」

「・・・。」


黙々と岩をどけていく。
いつもの俺ならこんなことしない。

厄介事は御免だ。と、今でも思っている。


だが、俺はこうして彼女を助けようとしている。


そう、俺は風がほしかった。
何も動かないこの世界で、動いているものを欲している。



次へ

s.1
やめる