「お、あんた。」

T字路から、一人の少年があらわれた。
楓と同じ制服を着ている。この学校の生徒のようだ。

「あんたもこの学校の生徒か?」

「え?、えぇ・・・。あなたは?」

「俺?俺は袖藤っていうんだ。よろしくな。」

見た目に似合わずヘラヘラとした口調の少年は、袖藤と名乗った。

「もうちょっとすると校門だぜ。」

「ふぅ、ようやくだわ。」

もう一息と知って、ちょっと胸をなでおろす楓。
汗をタオルで拭き取ると、楓は袖藤と共に歩きだす。

ちらほらと、ほかの学生も見え始めた。

「そういや、あんたこの辺じゃ見ないけど・・・どっから来たの?」

「松江からよ。」

「松江ぇ!?そりゃずいぶん都会からだな。」

「そう驚くことないんじゃないの?」

「いや、でもよぉ。そんな遠くからはるばる山越え谷越え徒歩で来たのか?」

「途中まではバスがあったからね。こんな田舎に入学させるなんて、うちの親の頭はどうにかしてるわ。」

「うん?親に・・・入れさせられたのか?」

「え?えぇ・・・。」

「ふぅん。変わってるね。」


何となく変な空気になってしまったが、こういうのは気にした方が損だろう。
そんなやり取りをしていると、校門が見えてきた。
次へ

s.1
やめる