一発の銃声が響いた。

とは言ってもサイレンサー越し、しかも人里から離れているため、誰も気付けない音だった。

撃った本人と撃たれた本人以外は…。いや、撃たれたほうも気付いていないかもしれない。

「悪ぃな…。」
俺の目の前で、一人の男が崩れ落ちる。

ここは廃工場のパイプラインの上。
俺は、今、この男を始末した。

「…任務…ってか。」

俺は火炎瓶で死体を焼却した。肉の焦げた、何とも不快なにおいが漂う。

この男は、ア・バオア・クーの研究者。その情報を外に漏らそうとしたから殺された。いや、殺した。


俺はア・バオア・クーの守護者として、影の塔の任務に従わなければならない。
逆らえば俺は即座に殺され、代わりの守護者がたつ。

本当に、俺はひとでなしだ。保身のため、人まで殺す。

(ざまぁないぜ、バーカ…)
心の中で殺した相手を嘲笑して、罪の意識を薄くすることが精いっぱいだった。

(…帰るか…。)

俺は、情報端末を腰部ラッチに装着した。
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