「なぁ、三郎太。マサヤンにも指令だしてたのか?」
「いや、奴の独断だ。」
マリと三郎太が扉の向こうで話している。
俺は痛みに耐えて、ベッドで横になっていた。
傷は、マサヤンにつけられたものだ。
緩慢な風の吹く中、嵐は突然やってきた。
「おい。」
にわかに降ってきた声に、俺は思わず顔を強張らせた。
「お前はレイタだな。」
冷たい女の声が、鼓膜を震わせる。
俺はベッドの中に忍ばせた槍…ハルベルトを握りしめて、突く構えまでしてから首をひねった。
冷たい笑みを浮かべた少女がいた。
しかし、どうにも殺気は感じない。俺は殺気の満ちた場所にいたことを痛感する。
「三郎太はどこだ?」
「…誰…だ?」
「すまない、時間がないのだ。」
「あの扉の向こうに…。」
「感謝する。」
彼女は風のように俺の部屋を後にした。
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