「えー、今日から皆と同じクラスで勉強することになった、南戸 海斗君だ。」
担任の教諭が説明を終えると同時に海斗はチョークの手を止め、下ろした。

黒板には控えめに「南戸 海斗」と書いただけ。
海斗はため息をついて、教室の席のほうに振り返った。

「南戸です。前の学校ではテニス部でした。よろしくお願いします。」

当たり障りのないような自己紹介をして、担任に指示を仰ぐ。
担任は、窓際にある一つだけ誰も座っていない席を指さし、海斗も軽く会釈してから向かった。

周りのざわつきは転校生が来ると大体こうなる恒例の状態だった。

席に付いたとたん、いつも以上に倦怠感に襲われた。
引っ越しと転入手続きで異様に疲れた。

窓から空を見上げ、ため息をついた。

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