受験シーズンが終わりかけの2月末。
もう既に雪解けの始めの季節だった。
−音楽準備室−
美咲は意味不明な歌を歌いながらバストロンボーンをケースから出していた。
「まーさかーりーかーついーだー桃太郎ー♪
サールにまーたがーりー奴隷の稽古♪」
「だっさい曲w」
「ださくて悪かったな(´・ω・`)」
途中で割り込んできた彼女の名は、バスクラリネット吹きの柏葉紗枝(かしわばさえ)である。
美咲とは低音の仲で仲が良い方らしい。
紗枝が言った。
「そういやさ、バストロンボーンで1stやることになったってマジ?」
「あー・・・まぁツライけどそーゆーことw」
美咲が苦笑いしながら答える。
バストロンボーンは音域も広く、低い音も出しやすくなったが1つだけ難点がある。
それは、高い音が出しにくいこと。
こればっかりはかなりの技量が無いと出せないのだ。
「テナーバスには戻さないの?」
「悠先輩が転校したら悠先輩のテナーバスを受け継ぐよw あ、ちょっとこのマウスピース持ってて」
「うん・・・・・」
紗枝はとたんにバツが悪いような感じがした。
先輩が転校するということは大切な人がまた1人減ってしまうから、
それを思い出させたくないと思ったのだろう。
「・・・・なんかごめんね。」
「んぇ?なにが?」
美咲はそんなこと微塵も感じていないようだった。
相変わらず強い精神を持ってるなぁ―――
「じゃ、出し終わったから音楽室戻るわw」
美咲はさっさと行ってしまった。
「ちょっとまてマウスピース忘れんなwwwww」
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