ガチャのための数学

はじめに

 当たりの排出確率が3%のガチャがあったとする。このガチャを100回回した時、何枚の当たりを引くだろうか。3%だから単純に3枚と考えてしまう方は、確率と期待値を混同して考えている可能性がある。
 このページではガチャを考える上で必要な数学上の知識について紹介する。

確率と期待値の違い

 確率とはある事象が起こる割合のこと。分母は全事象数、分子は対象とする事象が起こった数である。一方、期待値はある事象が起きたときの結果の平均値。ある事象を数値としたとき、その数値と確率の積の総和で計算される。
 確率3%のガチャの話に戻ろう。確率3%のガチャを100回回した時、当たりの枚数とその状態になる確率は表1のようになる。

表1.確率3%のガシャを100回回した時の確率
枚数確率確率の累積
0枚4.755%4.755%
1枚14.707%19.462%
2枚22.515%41.978%
3枚22.747%64.725%
4枚17.061%81.785%
5枚10.131%91.916%
6枚4.961%96.877%
7枚2.060%98.938%
8枚0.741%99.678%
9枚0.234%99.913%
………………

 期待値Eは次式で計算される。 E=0×4.8%+1×14.7%+2×22.5%+3×22.7%+……
E=3
ガシャを100回回した時、当たりが3枚になるというのはこの期待値のことである。

 表1から明らかなように、ガチャを100回回したときに出る当たりの枚数は3枚のこともあればそうでないこともある。当たりが3枚だけになる確率はたった22.747%、当たりが2枚だけになる確率も22.515%あり、当たりの数が2枚になる可能性と3枚になる可能性はほぼ等しい。累積で考えれば、当たりが2枚以下である確率は41.978%も存在する。ガチャ100回回したとき、引いた当たりの枚数が期待値の3枚を超えないことが頻発するのは当然である。

n回ガチャを回したとき当たりが1枚以上になる確率の計算

 n回ガチャを回したときに起こり得る事象は当たりが0枚か、当たりが1枚以上になる2事象が考えられる。よって、全事象100%から当たりが0枚である事象の確率を引くと当たりが1枚以上である確率になる。
 ガチャの当たりが引ける確率をpとすると、当たりを引けない確率は1ーpとなる。n回ガチャを引いたときその全てがハズレである確率は(1ーp)を引き続けることであるから、(1ーp)^n(n乗)となる。よって求めたい確率Pは P=1ー(1ーp)^n  当たり確率が3%のガチャを100回回したとき当たりが1枚以上になる確率は、p=0.03、n=100を代入して P=1ー(1ー0.03)^100=95.2% ガチャを100回回すと、95.2%の確率で当たりを1枚以上引くことができる。

 今、n回ガチャを回したときに当たりが1枚以上になる確率がP=1ー(1ーp)^nであることが分かった。ではあるPにするために必要なnはどのようにして求めればよいだろうか。nについて方程式を解くと P=1ー(1ーp)^n
(1ーp)^n=1ーP
n×log(1ーp)=log(1ーP)
n=log(1ーP)/log(1ーp)
 当たりの確率が3%のガチャにおいて1枚以上当たりを引ける確率が50%を超えるガチャ回数nの求め方は、P=0.9、p=0.03を代入して n=log(1ー0.9)/log(1ー0.03)=75.6 ガチャを76回回すことで90%の確率で当たりを引けることになる。

n回ガチャを回したとき当たりがm枚ちょうどになる確率の計算

 n回ガチャを回した時に当たりがm枚出たとすると、ハズレは(nーm)枚出たことになる。ここで1回目に当たりがでて2回目以降ハズレが続く確率P1を考えると P1=p×(1ーp)×(1ーp)×(1ーp)×…… 1回目はハズレ、2回目に当たり、3回目以降ハズレが続く確率P2を考えると P2=(1ーp)×p×(1ーp)×(1ーp)×…… 1回目、2回目はハズレ、3回目に当たり、4回目以降ハズレが続く確率P3を考えると P3=(1ーp)×(1ーp)×p×(1ーp)×…… このように、当たりの回数が同じでも当たりが出るタイミングによって別々の事象としてとらえられる。
 当たりm枚出る確率はp^m、ハズレが(nーm)枚出る確率は(1ーp)^(nーm)であり、この積にさらに組み合わせの数を掛けることによって当たりがm枚ちょうどになる確率Pとなる。組み合わせ記号Cを用いて P=nCm×p^m×(1ーp)^(nーm)
ここでnCm=n×(nー1)×…×(nーm+1)/(2×3×…×m)
 当たりの確率が3%のガチャを100回回したとき当たりが3枚だけ引ける確率は、、p=0.03、n=100、m=3を代入して P=100C3×0.03^3×(1ー0.03)^(100ー3)
P=100×99×98/(2×3)×0.03^3×(0.97)^97=22.7%
ガチャを100回回して当たりが3枚だけになる確率は22.7%と分かる。

 同様の計算をすることによって表1を得ることができる。1〜m枚ちょうどを引ける確率をそれぞれ計算し、その和を取ることで表1で示した確率の累積になる。この累積から当たりがm枚以下になる確率Pを知ることができ、m+1枚以上になる確率も1ーPで分かる。