漆黒のヘキサグラム・純白のペンタグラム外伝 人狼編2
第二話 「薄刃陽炎」
◇6月27日
陽光がまぶしい。
これだから僕は朝が苦手なんだけどなぁ……。
夏の照り付ける太陽の光は朝っぱらだというのにギラギラと枕戸の森、そしてこのツリーハウスを容赦なく照らしていた。
だが、こんなところで日が収まることは無く昼ごろにかけてこれからどんどん灼熱の魔の手をのばしてゆくのだ。
それなのになんで”コイツだけは”元気なんだ……?
僕の目の前に居るのは、昨晩からここに泊まることになった犬耳のついている少女(?)である。
ツリーハウスの部屋の真ん中に設置された卓袱台の上に置かれた簗をさっきからじーーーっと見つめている。
こんなに暑い朝だと言うのに何故こんなに普通にしていられるのか理解できない。
本当に茹だるような暑さ……これだからこの国は……。
そんな僕の思考と接点をまったくもたず、紫乃はただ、簗を眺めていた……。
うむ、黙っているのがつらくなってきたところで、僕は適当に紫乃に話題を振る。
「ところで、紫乃の荷物ってどっかにあるの?」
家を持たずに暮らしてきたと言うのだから大層大きな荷物を抱えて旅のようなことをしていた、というのが僕の勝手な見解だ
った。
だが、やはり紫乃は僕の期待・想像の全てを360度裏切ってみせる。
「……へ?荷物なんてないよ?」
「ぇ、じゃぁ今までどうやって暮らしてきたの!?」
「えっと……忘れちゃった、テヘ☆」
テヘ☆じゃないよ、――――なんてこった!!
僕は自然で取れたもの、自然の中だけで暮らしているこの生活で十分サバイバルというか、野性的なものを感じていた。
でも、それを明らかに上回る人が今、目の前に居る…!!
「待って、てことはその服以外に何も持ってないってこと!?」
白いワンピースを指して叫ぶ僕を、さも不思議そうに紫乃はみつめていた。
「………そうだけど……………ダメ?」
言い終わった途端に紫乃は何を思ったのか眼を潤ませる。
ぼ、僕はなにも怒ってるわけじゃなくて……。
そう弁明しようとしたが、それより先に紫乃が行動に出ていた。
紫乃が自分のワンピースの肩のところを掴み、脱ごうとしはじめたのだ……!!
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