Glück7
りりりりりっ
いつものように目覚まし時計の泣き声で、目が覚める。
薄い布団を押しのけて、足を床へ下ろす。
目覚まし時計に手をかけて、雨戸を開ける。
「ガラガラガラ・・」
「あ。」
黒い猫がすぐそこに座って居た。
黒猫は逃げることは無く、ゆっくりとこちらを見て、止まったまんま。
「人になれてるんだな。」
となんとなく話しかけてみる。
暑いので網戸にしてそのまま洗面所へ向かった。
黒猫は四つん這いに立ち上がり、こちらに歩いて来るのがわかったが、網戸によってその進入は阻止された。
洗面所で歯を磨いていると、窓のほうから何か物音がした。
歯ブラシを口に突っ込んだまま様子を見に行くと、さっきの黒猫が器用に前足で網戸を開けつつある。
もう猫の小さな体なら入れそうな隙間ぐらいは空いていた。
黒猫はそこに頭を突っ込み始めてしまった。
あぁ、やばい。外に出さないと。
しかし僕はなれない動物には果敢に触れるタイプの人間ではないのだ。
でもどうぶつかってない人大体そうじゃないかな。
ということで、網戸の目の前まで行ってもすぐに猫を追い出すことができず、一瞬ひるんでしまった。
その一瞬の隙に黒猫はついに全身この富沢家の中に進入を果たしてしまったのだった。
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Glück7
やめる