神になった。
 
 のは、妹の諷理だった。
 何でかそれに巻き込まれた私は、生まれ育った町の神社で神のような役割を負わされている。
 
 「ゆーりさん、ゆーりさん」
 
 毎日飽きずに私のところに来てくれるのは、2人の少年少女だった。
 少女は美和。
 昔馴染みと言える人の子孫で、力を受け継いでいるようだけれど、自覚はしていないようだ。
 少年は日向。
 美和とよく一緒にいて、彼女の事が好きなようだった。
 二人に囲まれて、この街の昔の事を思い出すのが、そして彼らに語り継ぐのが、私の日課となっていた。
 美和の持っている歴史書は、大分改ざんされていて、私にも覚えのないことがほとんどだった。
 だから美和は、私の話に楽しそうに、面白そうに耳を傾けてくれる。

 「美和の」

 少し懐かしく思って、まだしたことのない思い出話を始める。

 「美和の、ひいおばあちゃんはね。」

 それはかつて共にいた、優しいお嬢様の話だった。

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彼女が幸せになるように。 s.1
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