瞬間、2人は目から脳へ伝わるお互いの
映像をスローモーションに捉えた。
一瞬の表情。お互い相手の表情が艶やかに見える。
シーツと触れている部分に汗が滲む。
それは興奮のための身体の熱による汗か。
それとも緊張による冷や汗なのか。
じわりと一見気持ち悪さを感じるその
濡れた感覚さえ、まだ何も経験のない中学生の
興奮を誘うひとつの要素になる。

どくん。
心臓の音が大きい。このまま速くなって
急停止してしまうんじゃないかという程。
1回1回の鼓動に身体全体が揺さぶられているようだ。
拓はそっと優の胸に触れる。同じだった。
お互いの鼓動の振動が伝わりあうだけで
溶け合ったような感覚に陥る。
全身へ血液が巡る。徐々に体温が上がるのが分かる。
もしも体温計を当てていたとしたら、その数値は
ぐんぐんと上がっていただろう。

はあ、と熱のこもった息を漏らせば
眼下のはたまらないとばかりに身をよじらせ
その姿を見た拓の口の中はカラリと乾く。
口を閉じ息を止めればごくんと喉を鳴らした。
胸に当てた手をするり、とずらして頬へ当てる。



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