春。私が入学する高校は、県内屈指の進学校。
そして、今日は高校の入学式だ。
私が同じ町内の人たちに頭を下げて集めたなけなしのお金で揃えた、真新しい制服に身を包み、トントンと中学の頃から履いているローファーのつま先で玄関の床を叩いてから、外に出る。
ふわふわした甘い桜の香りが、これから始まる新しい生活を祝福してくれているみたいで、私は思わず微笑んだ。
まだ母は多額の借金を抱えているし、また男を作ってどこかへふらふらと毎晩出かけて行ってしまうけど、それもなんとかなるんじゃないかっていう気がする。
私は期待で胸を膨らませ、高校の入学式に臨んだ。
ーー頭の片隅では、あの曲が流れている。
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rainy song #2 s.1
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