我が校は地域に根付き、地域を目指したいわゆるド公立高等学校というやつで、お世辞にも予算等に余裕などあるとは言いがたいとても貧乏でごく一般的な高等学校である。

これといって変わった行事や特徴があるというわけでもなく、制服こそ生徒からの人気は高いものの、ありがちなブレザーだ。極めて安物ぞろえと言わざるを得ない。
強いて言うとすれば、死神という希少かつ神出鬼没な種族に属している俺が、ここにこうして存在しているということぐらいではないか?
あえて希少価値を見出すとするなら(そんなものの必要性が一体どこにあるのかは知る由もないが)そのくらいしかない。

あぁ、俺はまたこんな場所で貴重なウン百年を過ごすのかなァ……などと戯れの同情を自分に向けるものの、それが現実になりうる可能性大である現状、笑えたもんじゃない。

普遍的で何一つ変化しない慢性的な人間の暮らしぶりを眺め続けるのにも、いい加減飽きてきた。
200年だ。
俺には200年の記憶がある。人間は確かに自分ができなかったことを乗り越えて新たな物を作り、団結し、様々に喜びを感じることができるだろう。

俺にはこの200年、そんなものは一欠けらもなかった。自分の居場所がどこなのか、フラついて分からなくなりそう……などもなにも、元々足場など用意されてはいなかった。
地球上でドンパチやってるお偉いさんのチェスゲームも、1ヵ月単位で進化するICの小ささも、正直俺からすればドブ沼の泥の一粒に過ぎない。

俺は今沈み続けている。
神様だからって何かが違うわけじゃない。こうやって生まれてきた俺には、この世のコトワリが見え透いてしまうが故に、何も感じられない。

止まらないフリーフォール。ナマゴロシ。こんな殺し方ありなんだって気付いたのは、大体100年前くらいだろうか。
俺は生まれた瞬間に死んだようなものだったのかもしれない。


だが、そんな200年という長い暮らしの中でも、「非日常」とまではいかないが、「珍妙」という現象ならばたびたび起こりうる。

俺はそんな貴重な「珍妙」に遭遇してしまった。

いや、見てしまった、踏みこんでしまった、できれば見なかったことにしておきたい状況に出くわしてしまった。

「珍妙」な女に連れられて、「珍妙」な場所に、「珍妙」なシチュエーションで。
珍妙のオンパレード、等と言うと、これこそ何処ぞの死神気取りの口調であるが、あえて言おう。

パレードどころかライブ会場だぜ、こいつは。

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みやまクローク □2愚□ s.1
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