「やめてよっ」

拒絶の声。シャワーでくぐもったのも原因だろうか。
それでもその声はひそかに、しかし確実に甘美を含んでいた。

「離してっ」
「嫌だっ」

あいついで発される声。その後に続いたのは少し高めのテノール。

「好きだから…かな」

すべての声はシャワー音と共にバスルームから。



次へ

s.1
やめる