数分後―――中央公園の入り口から、見慣れた影が現れた。
ティアだ。

ティア「ご、ごめんなさい、待たせちゃって……」

ルーク「別にいいよ。それより、どうしたんだ?」

息を切らして、どうやら走ってきたように見える彼女の姿を見ては流石に怒る気にもならない。まあ、ちょっと前までの自分ならもしかしたら怒ってたかもしれないが。…良かった、彼女に嫌味を言わなくて。今、そう心から思うルークだった。
寒いからなのか、深めにフードを被る彼女を見下ろしながらルークは微笑みかける。
数秒かけて何度も白い息を吐き、ようやく息を整え落ち着いたティアは、真っ直ぐにこちらを見た。

ティア「ル、ルーク。あの…」

ルーク「ん?」

単に寒いからなのか、それとも錯覚か。
なんだか此方を見上げるティアの表情が赤らんでいるように見えたが、そこは気にしないでおく。
ただ、必死に何かを伝えようとしているティアを静かに見守っていた。

ティア「……あの……その」

なんだか徐々に、ティアが顔を下に俯かせて声のトーンが下がっているようだった。なので、ルークは気を利かせて、ニッコリと微笑みながら言う。

ルーク「遠慮しなくていいからさ、言いたいことあるなら言ってくれ」

ティア「…え、ええ……」

そう声をかけた瞬間に、おずおずとティアは顔を上げ、…いきなり何をしだすのか、身に纏っていたコートのボタンをゆっくりと外し始めた。思わず、ルークはぎょっとする。

ルーク「ティ、ティア?!」

制止も聞かずにティアはコートのボタンを全て外し、ばっとコートを脱ぐ。
ルークは咄嗟に両手で目の前を覆ったが、…好奇心というものか、はたまた気になるためか…そーっと視界を覆い隠していた両手をどかし、目の前を見た。
すると、目の前にはいつもの服装ではない、ティアの姿があった。
なんとも可愛らしい、赤色と、ところどころに白いファーのついたノースリーブワンピース。あの深く被っていたフードの下には、服と似たような彩の帽子を被っており、それに見惚れつつも、それが何を表しているかルークは確信した。
子供の頃、よく聞かされた…赤い服の、クリスマスに子供達にプレゼントを配るといわれるおじいさん。いわゆる、「サンタクロース」の服装を今風にアレンジした衣装だった。

ルーク「ティア……そのかっこ……」

ティア「…や、やっぱり…似合わないかしら…」

もじもじと頬を染めて軽く俯きながら、ティアは上目遣いにルークを見つめる。自信なさげなティアを見て、ルークは慌てて喋りだした。

ルーク「そ、そんなことない!……すっげ、可愛い…よ」

ティア「! …本当に?」

ルーク「ほ、ほんとだ!」
ルークに褒められたのが相当嬉しいのか、何度もティアは本当?と聞きなおし、ルークもまた何度も本当だ、と言う。そんなやりとりが何回か続いた後、二人でぷっと吹き出し笑いあった。

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