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クリスマスの奇跡

更新日:2008-12-13 12:39:00

クリスマス――・・・
それは、わたしの嫌うものの一つ。
たかが人が生まれた日なのに。
何でそんなに楽しむの?
わたしにはわからない。
そんなに騒いで何が楽しいの?
そんなことで喜べないわたしがおかしいの?

だって・・・しかたないじゃない。
たかが人が生まれた日。
しかも、何百年も前に死んだ、見たこともない人の。
それが、家族や友達だったらわかる。
もうあえないけれど。
もう、いないけれど。
引越しをしたその日に死んでしまった母と父、そして弟。
今更作れない友達。
もう私のことなんか覚えていない友達。
もう、私のことを気にする人はいない。

そんなことを思いつつ、わたしは歩く。
“クリスマスカラー”とかいう、赤と、緑に満ちたセカイを。
ただの、薄っぺらな平和の上に成り立つこの町を。
この国を。

わたしは当てもなくさまよい――・・・
ついたのは、古びた洋館。
いたのは

真っ白い

少女だった。



「〜・・・アナタは、誰・・・?」
問いかける。
返ってきた答えは
「・・・ネーロ・・・」
・・・イタリア語で、“黒”。
「・・・なんで、ここにきた?」
「さまよってたら、ついた。」
「・・・・神様なんて、ホントに偶然が好きだよなぁ・・・」
つぶやいた、その端正な顔立ちは中性的で、わたしは見とれてしまいそうになる。
「・・・・お前、俺の手伝いしてくれるか?」
「・・・いいよ。」
確かに、この人は俺といっても違和感はない。
それに、何もせずに歩いているのはつらかった。
「俺と一緒に、探してくれ・・・奇跡の、ネーヴェ。」
―・・・奇跡の雪―・・・
「そんなモノ・・・」
奇跡なんて。
わたしはしらない・・・

「真っ白い、布なんだ。一緒に、探してくれるよな?」
「っ・・・いい、わよ?」
「どうも。」
その少女は、綺麗に笑った。



わたしがいるのは、空の上。
彼女が連れてきた。
そして、私の目には、蒼色のカラコン。
コレをつければ、奇跡のネーヴェとやらが見つかるらしい。
「・・・・ない・・・」
ネーロの顔に浮かぶ、焦り顔。
「また、今年も・・・雪が降らないのか・・・」
「?それってどういう・・・」
そのとき、ネーロがそう言った時、私の記憶がフラッシュバックした。
移ったのは、前住んでいた街。
誰も近寄らない、森の木の中。
「っ・・・ネーロさん、向こういってください・・・」
「向こうにあるのか?」
「はい・・・」

 ☆

「・・・あった・・・」
古の木。
その木のうろに、それはあった。
「やった・・・!これで雪がふる・・・!」
「・・・ネーロさん、どうしてコレがあると雪が降るんですか?」
「ああ、これはな、神様のいたずらなんだ。」
「・・・神様の、いたずら・・・?」
ネーロは語り始めた。
「この布は、雪を降らせる力がある。んでもって、年に一度、このクリスマスの日に、神様はこの布を地球のどこかにかくすんだ。
 そして、コレを見つけたら俺たち、死神の勝ち。」
「死神・・・?」
彼女は、どうやっても死神には見えない。
白いかみ、白い服、蒼い瞳。
「そ。今年は運がよかったんだな。」
「―・・・」
私はあっけにとられて立ち尽くしていた―・・・



森を、歩いてでた。
見えるのは、引っ越す前の風景そのまま。
「・・・」
なにもかもが、懐かしい。
「―!ノエル!久しぶり!!」
「っ!ミリ!モモカ!リンゴ!」
走ってきた、三人の少女は、ノエル、私の友達だ。
「久しぶりーっ元気にしてたーっ?」
「え・・・あ、うん・・・」
「どしたの?元気ないじゃん?」
「そ、そんなこと・・・」
「あ、後ろにいる人誰っ!?彼氏?」
「はいっ!?」
あくまでも、ネーロさんは女だとわかる、はずだ。
振り向いて、びっくり。
いたのは、白い髪の男の人。
「いいや。ノエルの友達。いやぁ、こいつ最近元気ないし、俺以外の人とうまくないみたいでさ。」
「へぇーっいい友達もったね、ノエルっ」
「最近ぜんぜん連絡なかったから、私たちのことわすれたのかな、とか。」
「友達とうまくやってないのかな、とか。」
「そんなことばっかり思ってたんだよ?」
うそ・・・
それじゃあ、今まで、私は、自分ひとりが被害者のつもりで、可哀相な子を、演じていただけ・・・?
本当は、みんな・・・
「え?ちょっと!どうしたの?」
っ・・・頬を伝う、水の感触。
久しぶりにながした、涙。
私は、こんなにも・・・
「っ、ありが、とう・・・」
「どういたしまして。」
三人は、笑顔で、私を見つめていてくれた。



次の日。
ガラッ
「お、おはよう・・・」
一瞬の静寂が、教室に満ちる。
「やったーっ!!」
え?何・・・?
「おはよっ、ノエルさんっ」
「ようやくしゃべってくれたねっ」
「私たち、ずっと心配だったんだよ?」
「なんにもしゃべってくれないからっ」
え・・・っ
やっぱり、私の被害妄想だったんだ・・・
「っ・・・」
「ね、そんなとこじゃなくて、私の机ではなそーよっ」
「うん、そうしよーっ」」
「はやくしたくしといでよ!」
男子も、女子も、皆、笑っていた。
「っ・・・うんっ」
皆が笑っていると、私まで笑いたくなった。
「ノエルさん、こんどっから、呼び捨てでいい?」
「うん、いいよっ」
だから、私は、わらった。
心から、笑顔で。

「あ・・・見て、雪がふってる・・・」
「ほんとだ!今日はホワイトクリスマスだねっ」

降り積もる、雪の中に、“黒”という名の、“白い”少女の姿が見えたような気がした・・・



―な、いっただろ?
―でもただのおせっかいじゃ・・・
―いいんだよっとりあえず皆笑顔じゃん?
―ま、そうだけどね・・・
―じゃ、いくか。
―わかったよ。



すべての人に、、メリークリスマス!